要点
- ベトナムは、チャイナプラスワンの中心ジェトロの調査で、ベトナムの日系企業の事業拡大意欲は、2年連続でASEAN首位です。他国からの生産移管の先としても、ベトナムは最多です。
- 日本からの投資は、直接投資だけではない日本から新しく工場を建てるだけでなく、すでにベトナムに拠点を持つ日系企業が、ベトナム国内で、次の投資先を探す動きがあります。
- タインホア省は、その「次の投資先」の候補ハノイから約150〜160km、人口は全国3位で、ギソン経済区には日系の大型案件が稼働し、住友商事が新しい工業団地を開発しています。
Why ベトナム:チャイナプラスワンとしての重要性
中国に生産を集中させるリスクを分散するため、生産の一部を他の国に移す動きが、「チャイナプラスワン」です。ベトナムは、その移管先として、日系企業から最も選ばれている国のひとつです。
| 項目 | 数字・内容 |
|---|---|
| 事業の拡大意欲 | ベトナムの日系企業で、今後1〜2年に事業を拡大するとした企業は56.9%。2年連続でASEAN首位(ジェトロ「2025年度 海外進出日系企業実態調査」、ベトナムでは906社が回答) |
| 業績 | 2025年に黒字を見込む企業は67.5%で、2009年以降で最多。5年ぶりにASEAN全体を上回った |
| 生産移管の先 | ASEANへの生産移管のうち、中国からは176件中90件、日本からは289件中106件が、ベトナムへの移管で、いずれも最多(ジェトロ「2024年度 海外進出日系企業実態調査」)。直近5年(2019〜2024年)に他国からの生産移管があった企業は24.8%(181社) |
| 移管の理由 | 顧客の生産移管への対応、米中貿易摩擦による関税対策、中国事業の不確実性の回避 |
| 現地調達 | 今後1〜2年に現地調達を拡大するとした企業は50.9%で、ASEAN平均(37.7%)を上回り、ASEANで首位。現在の現地調達率は36.6%で、伸びる余地がある |
| 日本からの投資 | 2025年の対ベトナム直接投資(認可ベース、出資・株式取得を除く)で、日本は30億7,850万ドル(前年比19.5%増)の4位、件数は429件で5位。ベトナム全体の直接投資の実行額は276億2,000万ドルで、過去最高 |
日本企業にとって、ベトナムに進出する意義
- リスクの分散中国に集中した生産拠点を分け、関税や、地政学の変化に備える
- 顧客に合わせた移管取引先が生産をベトナムに移すなかで、部品や素材のメーカーも、近くで供給する必要がある
- 拠点の位置づけの上昇ジェトロの事例では、ベトナム工場を「東南アジアの中核工場」として増強する企業や、中国の工場を2021年に売却して、ベトナム中心の体制に切り替えた企業がある
- 内需の取り込みベトナム工場の製品を、日本への輸出だけでなく、ベトナム国内にも販売する企業がある(ある電子部品メーカーでは、国内販売が売上の25%)
ベトナム国内での再投資先を探す日本企業
ベトナムへの投資は、日本から新しく工場を建てるだけではなくなっています。すでにベトナムに拠点を持つ日系企業が、ベトナム国内で、次の拠点を探す動きがあります。事業の拡大意欲の高さと、採用難の広がりが、その背景にあると、弊社は見ています。
| 背景 | 事業拡大意欲が高い(56.9%)。ベトナム工場を中核工場として増強する企業が出ている |
|---|---|
| 課題 | ハノイ周辺などの既存の地域では、採用が難しくなっている。直近2年間で「採用が困難になっている」と答えた企業は48.2%で、北部の製造業では76.0% |
| 求められる条件 | 既存の拠点から、通える・運べる距離にあること。採用できる労働力があること。区画を確保できる工業団地があること。人件費が抑えられること |
日本からの新規投資と、ベトナム国内での再投資(増資・新拠点)の比率を示す公的な統計は、今回の調査では確認できていません。上の「課題」と「求められる条件」の関係は、ジェトロの調査の数字をもとにした、弊社の見方です。
Why タインホア省:次の投資先として、なぜタインホア省か
ハノイ周辺の工業団地は、すでに多くの日系企業が集まっています。そのなかで、タインホア省には、次のような特徴があります。
| 視点 | タインホア省の特徴 |
|---|---|
| 立地 | ベトナムの首都ハノイから南へ約150〜160km。高速道路で約2.5〜3時間で、ハノイ周辺の拠点と、日帰り〜1泊で往復できる。住友商事の工業団地は、南北高速道路のインターチェンジから車で約5分、タインホア市の中心部から約15分(同社の工業団地サイト) |
| 労働力 | 人口は約376万人(2024年4月)で、ハノイ、ホーチミン市に次ぐ全国3位。省としては、最も多い |
| 人件費 | 最低賃金(2026年1月〜)は、タインホア市で473万ドン(地域II)。ハノイ・ホーチミン市の中心部(地域I、531万ドン)の約89%。人件費の比較へ |
| 日系の実績 | ギソン経済区で、出光興産・三井化学のギソン製油所(総事業費約90億ドル)、丸紅のギソン2発電所、太平洋セメント・三菱マテリアルが出資するギソンセメントが稼働している。市内には、桜井ベトナムの縫製拠点もある。日本は、省の外国投資の件数で首位(22件)。進出日系企業の一覧へ |
| 新しい工業団地 | 住友商事が、タンロン工業団地Ⅳ・タインホアを開発。第1期は約167haで、2026年3月に着工、区画の引渡しは2027年春以降の予定。詳しく見る |
| 投資の優遇 | ギソン経済区は、法人税10%を15年間など。省は、2026〜2030年に173プロジェクトを優先して誘致する。優遇の可否は、事業の内容で決まる。優遇策へ |
| 生活環境 | イオンモール タインホアが、2026年10月に開業予定。日本人向けの生活環境も、整い始めている。生活情報へ |
留意点
- 採用は、タインホア省でも課題になりうる採用難は、北部の製造業全体の課題です。タインホア省の人口は多いものの、職種別の賃金や、採用のしやすさの調査は、まだありません。
- 工業団地の入居は、これから住友商事の工業団地の区画の引渡しは、2027年春以降です。入居企業数の見通しは、一次資料では確認できていません。
- 日本人向けの生活の受け皿は、まだ十分ではない市内で、日本人向けのサービスアパートは、現時点で確認できていません。駐在員や出張者の暮らしと、現地の確認には、準備が必要です。
- 優遇は、必ず事前に確認する優遇の可否は、事業の内容、投資額、場所で決まります。投資登録の前に、専門家と省の担当部署でご確認ください。
弊社(NIKOMIX VIETNAM)は、現地視察のアレンジ、駐在員の生活立ち上げなど、タインホア市での立ち上げを、現地で支援しています。
出典
ジェトロ「業績や事業拡大意欲は好調継続、採用難の課題感は高まる(ベトナム)」(2026年)
ジェトロ「ビジネス展開の意欲は高く、求められる生産移管への対応(ベトナム)」(2025年)
ジェトロ「ベトナム、2025年の外国企業の直接投資、件数は4年連続で前年から増加」(2026年1月)
ジェトロ「ベトナムでの競争環境(2)サプライチェーン再編で受注増の企業も」(2025年)
- タインホア省の基礎情報、ギソン経済区、住友商事の工業団地、人件費、優遇策の出典は、各ページに記載しています(タインホアとは、投資環境、進出日系企業)。
確認日:2026年10月7日。数字は、各出典の発表時点のものです。