日本企業のベトナム進出動向:製造は北部、消費者向けは南部
日本企業の進出先は、事業の種類で、はっきり分かれます。製造拠点は、北部(ハノイ近郊、ハイフォン)に多く、消費者向けのビジネスは、南部(ホーチミン市)に多いのが、全体の傾向です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 投資の規模(2025年) | 認可額は30億7,850万ドル(前年比19.5%増)で4位、件数は429件で5位(ジェトロ) |
| 事業の意欲 | ベトナムの日系企業のうち、事業を拡大するとした企業は56.9%で、2年連続でASEAN首位。黒字見込みは67.5%で、2009年以降で最多(ジェトロ、2025年8〜9月の調査、906社が回答) |
| 回答企業の分布 | 603社(2022年8〜9月の調査)のうち、北部(ハノイ市、ハイフォン市を含む)が268社、中部(ダナン市を含む)が28社、南部(ホーチミン市を含む)が307社。製造業が309社、非製造業が294社 |
| 生産移管 | 日本からASEANへの生産移管289件のうち、106件がベトナム向けで最多(ジェトロ、2024年度の調査) |
| 事業の種類 | 立地の多い地域 | 特徴と主な例 |
|---|---|---|
| 製造拠点 | 北部 (ハノイ近郊、ハイフォン) |
ハノイの北、紅河を渡った地域(ハノイ市中心から車で約30分)に、住友商事などが開発したタンロン工業団地(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)がある。1997年に開発が始まり、キヤノン、デンソー、ヤマハなどの大手から中堅・中小の製造業まで、106社、約6万人が働く。ハノイ市とハイフォン港を結ぶ国道5号線沿いに、日系の工業団地が連なる。部品を供給する裾野産業の集積と、港への近さが、北部に製造業が多い理由とされる |
| 消費者向けのビジネス (小売・飲食・サービス) |
南部 (ホーチミン市) |
ホーチミン市は、購買意欲が強く、新しいものを好む消費者が多い都市とされる。「より積極的に支出したい」と答えた人は、カントー市で84%、ダナン市で68%、ハノイ市で18%(デロイトの調査)。ユニクロは、ベトナム1号店を、2019年12月6日に、ホーチミン市にオープンした(現在の分布は下の表) |
出典:ジェトロ(2026年1月)、ジェトロ(2026年)、ジェトロ(2025年)、ジェトロ(2023年、回答企業の分布)、JBIC Today(2023年5月、タンロン工業団地)、VIETBIZ(2021年12月、地域別の消費)、ファーストリテイリング(2019年11月)。回答企業の分布は2022年の調査のもので、地域ごとの業種の内訳は、同じ資料では確認できていません。「製造は北部、消費者向けは南部」は、上の事例と、地域の特徴にもとづく整理です。
日系小売の店舗分布:ユニクロとイオンモール
消費者向けのビジネスの代表として、ユニクロとイオンモールの、ベトナム国内の分布をまとめました。両社とも、ホーチミン市とハノイから始まり、いまは、北中部・中部へ広がっています。
| 地域 | ユニクロ(店舗名を確認できたもの) | イオンモール(開業済み・開業予定) |
|---|---|---|
| 北部 | 約13店。ハノイ市約11店(ホアンキエム、ロッテモール、ザ・ループIPH、メトロポリス、イオンモール ロンビエン、同ハドン、ロイヤルシティ、ハノイセンターなど)、ハイフォン市2店。ハロン市(クアンニン省)は、2026年秋冬に出店予定 | 3モール:ハノイ市(ロンビエン:2015年10月、ハドン:2019年12月)、ハイフォン市(レチャン:2020年12月) 予定:ハロン市(クアンニン省)、2026年11月 |
| 北中部 | タインホア省:イオンモール タインホアに出店(2026年10月15日の開業予定。ベトナム33店目) | 9号店:タインホア省(2026年10月18日にグランドオープン。延床約12万㎡、専門店133店) |
| 中部 | 2店:フエ市(イオンモール フエ、2025年)、ダナン市(イオンモール ダナン タンケー、2026年7月。32店目) | 2モール:フエ市(2024年9月)、ダナン市(タンケー:2026年7月) 予定:ダナン市(ホアスアン) |
| 南部 | 約16店。ホーチミン市約13店、ビンズオン省2店、ドンナイ省1店(ビエンホア市、2024年12月) | 3モール:ホーチミン市(タンフー セラドン:2014年1月、ビンタン:2016年7月)、ビンズオン省(カナリー:2014年11月) 予定:ドンナイ省(チャンビエン、11号店)、カントー市 |
| 全国 | 32店(2026年9月30日、ファーストリテイリング)。ここに、タインホア、ハロンが加わり、34店の計画 | 8モール(2026年9月時点)。タインホア(9号店)、ハロン(10号店)と続く |
今後の出店の見通し
- イオンモール:2030年度までに、ベトナムのモールを30施設に増やす目標です(現在の約3倍。2026年7月の報道)。2026〜2030年の中期計画で、ASEAN投資の約6割を、ベトナムに充てるとされます。2030年までに、事業規模を3倍にし、全国で300店舗のネットワークを目指します(総合スーパー、スーパー、専門店などを含む)。新規の出店先は、ハイフォン、ダナン、タインホア、クアンニンなどの、成長が見込まれる地方都市が中心です。
- ユニクロ:2026年は、ダナン(7月)、ハノイ(3月)、タインホア(10月)、ハロン(秋冬)への出店で、店舗数は約34店になる計画です。出店の多くは、イオンモールや、ビンコムなどの大型商業施設の中です。
- 読み取れること:消費者向けの日系企業は、まず、人口と所得の大きいホーチミン市とハノイに出て、そのあと、地方の中核都市へ広がっています。タインホア市は、その「北中部での最初の拠点」として、位置づけられています。
出典:ファーストリテイリング「東南アジア・オセアニア」(店舗数)、QuanTriMang「ユニクロの店舗一覧」(2026年7月)、VIETJO「31号店 ハノイセンター」、VIETJO「ダナン初出店・32号店」、VIETJO「ドンナイ省初出店」、VietnamNet「タインホアとハロンに出店」(2026年7月)、AEON MALL Vietnam「沿革」、イオンモール「タインホア」リリース(2026年9月11日)、VIR(2026年9月)、VietnamPlus(2026年7月)。ユニクロの地域別の店舗数は、公式の一覧を取得できなかったため、店名を確認できた店舗を数えた概数です(北部約13、中部2、南部約16の合計31店で、公式の合計32店との差は、確認できていない1店)。イオンモールの数は、報道により異なります(「9施設」とする報道は、総合スーパー等を含む可能性があります)。確認日:2026年10月7日。
日系製造業の製造拠点:小売との対比
日系の小売(ユニクロ、イオンモール)は、人口と所得の大きい、ハノイとホーチミン市に集まっています。一方、製造業の拠点は、港と、部品メーカーの集積に近い、北部(ハノイ周辺)と、南部(ホーチミン市周辺)の、工業団地に集まっています。中部は、どちらも、まだ薄い地域です。
| 地域 | 製造拠点の特徴 | 代表的な日系メーカー(例) | 小売との対比 |
|---|---|---|---|
| 北部 | ハノイ周辺、ビンフック、バクニン、ハナム、ハイフォンの、工業団地。自動車・二輪車の組立と、電機・電子、部品が、最大の集積 | トヨタ(ビンフック省)、ホンダ(ビンフック省、ハナム省。四輪と二輪)、日野(ハノイ)、ヤマハ発動機(ハノイ。ソクソン、ノイバイ)、キヤノン(ハノイのタンロン、バクニン省のティエンソン・クエヴォー)、デンソー(ハノイのタンロン工業団地) | 製造が最も厚い。小売は、ハノイ市に、ユニクロ約11店、イオンモール2モール |
| 北中部 | タインホア省のギソン経済区に、エネルギー・素材の大型案件。市内に、縫製。新しい工業団地(住友商事)は、2027年春から入居 | 出光興産・三井化学(ギソン製油所)、丸紅(ギソン2発電所)、太平洋セメント・三菱マテリアル(ギソンセメント)、桜井(縫製) | 小売は、これから。イオンモール タインホアとユニクロが、2026年10月に開業 |
| 中部 | ダナンを中心に、輸出加工型の中小の工場。日系の大手の組立工場は、少ない | マツダ(現地のTHACOが、クアンナム省で組立)、マブチモーター(ダナン)、東海興業(ダナン。自動車部品) | 製造は薄い。小売は、フエ、ダナンに、イオンモールとユニクロが進出 |
| 南部 | ホーチミン市、ドンナイ省、ビンズオン省の、工業団地。自動車・二輪車、食品、日用品、機械が、中心 | 三菱自動車(ホーチミン市圏。ビンズオン)、いすゞ(ホーチミン市圏)、スズキ(ドンナイ省ビエンホア市。四輪と二輪)、三菱ふそう(THACOが、ビエンホア市で組立) | 製造も厚く、小売も、最も厚い。ユニクロ約16店、イオンモール3モール |
- 製造は北部と南部に二極:自動車(四輪)の日系メーカーは、公表データで確認できる範囲で、北部(トヨタ、ホンダ、日野)と、南部(三菱、いすゞ、スズキ、三菱ふそう)に、ほぼ二分されています。
- 小売は、製造より、地方へ広がり始めた:中部(フエ、ダナン)や、北中部(タインホア)には、製造より先に、小売が進出しています。
- タインホア省の位置づけ:北部の製造の集積に、近い(ハノイから約150〜160km)一方で、いまは、エネルギー・素材と縫製が中心です。住友商事の工業団地は、組立・部品メーカーの、受け皿になる計画です。
出典:日本自動車工業会(JAMA)「ASEANの日系自動車メーカー 2021-2022」(四輪の工場の所在地。2022年)、トヨタ(アジアの工場)、キヤノン(製造拠点)、CRE倉庫検索「ベトナムの日系バイクメーカー」(2024年10月)、DENSO Manufacturing Vietnam、VIETJO(マブチモーター、ダナン)、VIETJO(東海興業、ダナン)。工場の所在地は、公開された資料にもとづく代表例で、すべての工場を網羅したものではありません。2025年の行政再編(省・市の統合)により、省名が変わった地域があります(例:ビンフック省は、フート省に統合)。表の地名は、おもに再編前の名称です。中部の2社(マブチモーター、東海興業)は、2005年・2012年の報道で、現在の稼働状況は確認していません。マツダ(THACO)と三菱ふそう(THACO)は、現地企業が、ライセンスで組立てる形です。確認日:2026年10月7日。
北部・南部の「次」の候補としてのタインホア省
- ハノイ近郊の工業団地は、すでに集積が進み、用地の確保や採用が、課題になっています(Why タインホア)。
- タインホア省は、ハノイから南へ約150〜160kmで、製造拠点としては、北部の拠点を補う位置にあります。ギソン経済区(製油所、発電所、セメント)と、住友商事の工業団地が、その核になります。
- 消費者向けのビジネスでは、省内初の大型商業施設、イオンモール タインホアの開業(2026年10月)が、日系の小売・サービスの、北中部への展開の目安になります。
出典
ジェトロ「コスト増に直面するも、ビジネス展開の意欲は高く(ベトナム)」(2023年)
ジェトロ「業績や事業拡大意欲は好調継続、採用難の課題感は高まる(ベトナム)」(2026年)
ジェトロ「ビジネス展開の意欲は高く、求められる生産移管への対応(ベトナム)」(2025年)
JBIC Today「企業がものづくりに専念できる工業団地の秘密」(2023年5月)
VIETBIZ「ベトナム地域別の特徴・消費スタイル考察」(2021年12月)
ファーストリテイリング「ユニクロ、ベトナム1号店を12月6日、ホーチミンにオープン」(2019年11月)
確認日:2026年10月7日。地域別の店舗数・工場の所在地は、公開された資料にもとづく代表例・概数です。ほかの国の企業の動向は、他国の動向をご覧ください。